国内外のブランディング事例を具体的に解説|5つの事例

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ブランドやブランディング、ブランド戦略を学ぶためには、具体的事例から学ぶことが楽しくてわかりやすいというのは、筆者自身の経験からです。

しかし、一般的なWEBの情報には、どのような課題を、どのように解決していったのか?というストーリーが記されていない情報が多く存在しています。

ここでは、皆さんも目にしたことがあるような企業やサービスのブランディングを、「①課題 → ②手法 → ③アウトプット」をセットで解説していきたいと思います。

   

1. 小田急グループ

目的・ゴール

「広く発展し続けるグループのブランディング」

ブランドの課題

鉄道をはじめ、運輸・流通・不動産など様々な分野で事業を展開する小田急グループ。さらなるグループの発展をはかるため、2005年に発表した事業ビジョン「Value Up 小田急」によってグループ各事業が担うべき役割、成長を志向する事業領域を明確に策定。

しかし、グループ各社におけるビジュアルアイデンティティが存在しておらず、各社で様々なロゴを使用しているなどグループ各社に一体感は感じられず、顧客には事業領域の広さを伝えきれずにいた。

解決するための手段や考え方

100社を超える様々な分野の小田急グループ各社の旗印となり、全てのグループ社員の共感が得られ、顧客にとってはグループの提供価値である「安全・便利・快適を基本に、お客さまに一つでも多くの上質と感動を提供すること」を伝えることができるブランドのコンセプト、アイデンティティが求められていたため、これを軸として、課題解決に臨んだ。

アウトプット

価値観と姿勢を集約したシンボルをつくりだすため、各種インタビュー、従業員ワークショップなどを通じて、小田急グループのブランド価値を「自然・歴史・都市文化の新しい融合」とし、ブランドが大切にすべき価値観を「真摯・進取・機知・融和」の4つのキーワードに集約した。

これからのグループの姿勢を「躍動感」「先進性」「お客さまとのつながり」と捉え、その視覚表現として、Odakyu の頭文字である「O」をダイミックにデザイン。現在、鉄道をはじめ運輸・流通・不動産などの様々な事業分野で、グループのシンボルとしてのデザイン展開を進行中させている。   

 

2. キッコーマン

目的・ゴール

「革新と伝統を融合したブランド再構築」

ブランドの課題

キッコーマン株式会社は、1917年に創業された日本を代表する食品メーカーです。古くから世界展開を積極的に行い、世界100ヶ国以上でしょうゆ製品を販売しています。

今では、グループ全体の売上の6割、営業利益の7割は海外で生み出されており、アメリカでは、“Soy Sauce”と言っても伝わらないが、“KIKKOMAN”ならわかるというくらい、同社の商品は同国の市場に根付いています。

一方で、キッコーマングループは事業の構造改革を進め、しょうゆ事業以外にも各種調味料、健康食品、バイオ、ワイン、デルモンテ事業、コカ・コーラ事業と拡大を続けていました。

消費者本位の原点に立つキッコーマングループには、グローバル化の進展と事業領域の拡大に対応するブランドの再構築が求められていた。

解決するための手段や考え方

ブランド調査の結果、消費者はキッコーマンブランドを「伝統があり安定感がある」が「活気にとぼしく保守的」と受けとめていました。

日本人にとって、キッコーマンブランドはあまりに身近なため、存在に気を留めない存在になりかけていたのです。また、キッコーマン=しょうゆという第一想起は82%に達しており、同社は代名詞ブランドが抱える、特定の製品イメージの強さが企業イメージの革新の妨げになりかねないジレンマにも悩んでいました。

強力な商品イメージを持つ企業ブランドを新たな事業領域へ戦略的に拡張する戦略—しょうゆの成功をてこにしたキッコーマンブランドの「革新と伝統の融合」へのチャレンジ—を提案した。

本プロジェクトには、サンフランシスコ、ニューヨーク、パリ、東京、のランドーグローバルチームが参画し高いクオリティを目指した。

アウトプット

目指したのは、サプライズではなく、顧客に共感をもって受け入れられるブランディング・ソリュ−ションです。

ここでブランド調査の分析によって、消費者にとって最大のブランド接点はTV広告(64%)ではなく、パッケージデザイン(69%)であることを突き止めた。

店頭で、食卓で、ブランドマークを見ることで、おいしい記憶が呼び覚まされる“おいしさ”を感じさせるデザイン。

幅広い商品群のパッケージデザインに使用しやすい“展開力”の高いデザイン。ランドーは、伝統の六角マークをブランド資産として継承することを提案し、“やさしさ・ぬくもり・親しみやすさ”を感じさせる小文字によるロゴタイプと、六角マークを組み合わせた新しいブランドマークを開発。

デザインコンセプトは「かよいあうこころ」。食のよろこびと、こころとからだの健康を伸びやかで柔らかに表現。

右肩に配した六角マークには、「革新と伝統の融合」への意志を込め、コーポレートカラーは、太陽や炎、大地や豊穣を感じさせ、“健康・若々しさ・活力”を象徴するオレンジ色だ。

 

3. ヤンマー

目的・ゴール

「ヤンマーをプレミアムブランドに」

ブランドの課題

内部でいろいろな改革にチャレンジしてきたが、その改革が「外」から目に見えるかたちにはなっていなかったという大きな課題を抱えていた。

さらに「ヤン坊・マー坊」のテレビCMの印象が消費者に根付いてしまっており、ブランド化させることへの足枷となっていた。

解決するための手段や考え方

次の100年を見据えたコーポレートブランディングプロジェクトが「ヤンマープレミアムブランドプロジェクト」だ。

この舵取り役にクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を迎え、掲げられたブランドステートメントは「A SUSTAINABLE FUTURE ─テクノロジーで、新しい豊かさへ。─」。

最大の豊かさを最小の資源で実現し、次の100年に向けて持続可能な資源循環型社会の実現を目指すという「ブランドの約束」とした。

さらに、庶民的なイメージの強かった同社を「エルメスのような会社」に変えるべく、ヤンマーの重要な商品のプロダクトデザインを、かつてフェラーリやマセラッティなどのデザインを手掛けた奥山清行を起用。

さらに農作業のためのウエアデザインは、イッセイミヤケのデザインを手掛けた経験のある滝沢直己氏を起用した。

アウトプット

新ブランドステートメントを伝えるテレビCMや新聞広告を集中的に投下することで、ヤンマーは確実にイメージを徐々に変えつつあります。

事実「ヤンマーさんの印象が本当に変わったね!」など、新規・既存顧客を問わず、社外から多くのポジティブな反応が得られ、社内においても会社の求心力は確実に上がってきているという。

ヤンマーの事例は「ブランドアイデンティティ」「ビジュアルアイデンティティ」「商品ブランディング」を一貫させることでコーポレートブランディングを成功させた秀逸な事例となった。

 

4. シトロエン

目的・ゴール

「名声を取り戻した自動車のアイコン」

ブランドの課題

世界的な不況が始まり、シトロエンのマネジメント・チームは売上低迷への対応を模索していました。

シトロエン車の購入動機として、消費者は機能やメリットを挙げてはいましたが、ブランドそのものは購買意思決定にほとんど影響を与えていませんでした。

ランドーとシトロエンは、売上を増加させ、ブランドの強みを強化して新たなチャンスをつかめるようになるためにブランディングプロジェクトを発足させた。

解決するための手段や考え方

競合状況分析によって明らかになったのは、シトロエンというブランドの強みは技術力だということでした。

ランドーはその技術的な進歩と、独創性あふれる歴史を強力に訴求する新しいポジショニングを考案し、同ブランドにとって好ましいニッチ・マーケットを開拓しました。新たなタグライン「Créative technologie」はシトロエンの他にない価値を伝えるものでした。

これを機に、ありきたりな販売店のセールス手法から脱却するため、シトロエン・ブランデッドショールームを開発した。クルマをセンターステージに配置し、ドライビングという冒険に命を吹き込むアイデアだった。

来店者には簡単な順路に従ってもらうようにし、ショールームとセールスエリアの間には壁がなく、外壁のラインはクルマのラインになぞらえた。

ショールームはフレキシブルでモジュラー式になっており、世界中の販売店で応用できるものにした。

アウトプット

ランドーの業務はブランド全体を変えるまでにおよび、あらゆるタッチポイントに拡張さた。

・ビジュアル&バーバルアイデンティティ
・環境戦略&デザインウェブサイト
・デザインオンラインブランドセンター
・ラインアップ拡張戦略
・社内エンゲージメント
・ブランドパートナーシップ戦略
・イベントプランニング
etc

リブランディングから1年後、不況の最中に売上は8%アップ。フランス人の69%がシトロエンを好きな自動車ブランドに挙げた。特に中国、ロシア、ブラジルといった発展途上国市場でセールスが好調だ。

 

5. 湖池屋

目的・ゴール

「広く発展し続けるグループのブランディング」

ブランドの課題

社会動向や市場動向、消費者動向が変化する中で、当時の湖池屋は競合他社との価格競争に陥っていました。

さらに、ポテトチップスの主力商品であるのり塩味やコンソメ味、うすしお味がコモディティ化してしまい、市場が停滞していることも課題であった。

解決するための手段や考え方

まずは、コアバリューを再度見直すことにした。湖池屋の目指すべきは、ポテトチップスの老舗という企業ポジション。そのために、経営トップが先頭に立ち、大がかりな変革を実施していった。

コーポレートマークは、老舗として家の紋を意識し、六角形の中心に「湖」を文字化したハウスマークに大きく変更し、六角形には、これまでのコアバリューであった「親しみ」「安心」「楽しさ」に、「本格」「健康」「社会貢献」を加えた新生・湖池屋のコアバリューも表現した。

さらに、企業のスローガンを「イケイケGOGO!」というフレーズに設定。

「新しいほうへ、イケイケ!」と。「高い壁にこそ立ち向かう、お菓子のチャレンジャー」ということで「難しいほうへ、イケイケ!」、「スナックの楽しさを忘れない、遊び心のあるブランドに」ということで「面白いほうへ、イケイケ!」と。社員が仕事をする上での共通認識として、この3つの意味がスローガンに込められているようだ。

アウトプット

変革はコーポレートマークや社屋、スローガンにとどまらず、社章や名刺、紙袋、封筒に至るまで行われた。

紙袋も国産紙を使用するという徹底ぶりで、一つひとつのこだわりが社内の変化につながっていくと考え、まず頭のなかを変えることで、見た目が変わり、生活が変わってきて、行動が変わっていくという流れを意識した。

社員の意識改革にも一役買っていたのは、商品をつくることで売上を出していくという考えではなく、一品に思いを込めて、必ずお客さんに届けると、という考えだ。

一品を探す、一品に込める、一品を伸ばす、一品を発見する、一品を広る。“一品が湖池屋を変える”という考えを大切にし意識の統一を図っていった。

 

まとめ

以上、国内外のブランディング事例を具体的に解説していきました。

とはいえ、どのような会社に頼めばいいのか?判断しかねるという悩みを多く頂きます、そんな方々には、こちらの記事(東京都のブランディング会社厳選13社|300社を徹底比較)を参考にしてみることをオススメします。

さらに、ブランディングの悩みは多岐に渡ります。例えば、

・競合他社との違いを明確に差別化できなくなってきた。
・組織が急拡大し、経営陣のメッセージが社員に届かなくなっている。
・広報や採用がうまくいっていない。
・離職率が低下しない。
・自社の強みや特長が、いまいち社外や消費者に伝わっていないと感じる。
・経営者とのコミュニケーションがとれるクリエイターが社内にいない。
・サービスは売れているのに知られていない。

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